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現代美術の森

日本万国博覧会開催35周年を記念して2005年に自然文化園内に「現代美術の森」としてオープンしました。清楚な森の中にある池や樹林と調和した美術作品13点を展示しています。 自然の中で文化の香りを感じ取ってください。

作品一覧


展示マップ

展示マップ


日だまりの池

①「阿」 小田信夫

1.「阿」 小田信夫

「阿」というのは仏教用語では物事や物質の始まりをさす。概念や考え方の中心となるコンセプチュアル・アートなども彫刻とみなされる現在、もう一度、具象彫刻について考え直すきっかけになればという意味で作家はこの作品を制作したという。馬のような動物の頭部の形の本質を造形化した作品といえよう。

また作者は、空手の名手から、前へ強く押し出す「つき」の動作に負けないほどの手前へと引く動作が、その技の「切れ、冴え」になるという話しを聞き、作品に向かう時にも、前へ前へと自分の気持ちを向けがちのところ、手前へと気持ちを向けるように心がけたという。それによって、見る人に対して自分の気持ちがよく伝わるのでは、と願いながら制作したとのことである。

 

小田信夫
1948年大阪市生まれ。大阪芸術大学教授。1980年、光太郎大賞展(彫刻の森美術館)においてエミリオ・グレコ特別優秀賞。1982年、美ヶ原高原美術館賞、1984年、優秀賞を受賞。2004年、二科展(東京都立美術館)においてローマ賞。2008年、文部科学大臣賞受賞等。大阪を中心に、数多くのパブリックアートが設置されている。

http://www.odanobuo-art.com/


②「畫90-2」 白徹洙

2.「畫90-2」 白徹洙

題名の「畫」は、日本語で画や書の漢字に相当し、書く、画す、描くといった意味である。この題名と作品の形との関連については必ずしも明らかではないが、古くから人体や動物の像を形作る彫刻素材として使われてきたブロンズという素材が、簡潔でシャープな抽象的な形に結実している様子が興味深い作品である。

 

白徹洙
1950年生まれ。1979年、第2回中央美術大展(国立近代美術館、ソウル)彫刻部大賞受賞。1980年、第3回中央美術大展(国立近代美術館、ソウル)特選受賞。1997年、第2回光州ビエンナーレ特別展(中外公園、光州)や2005年、第2回北京国際ビエンナーレ(北京)等、多数の展覧会に出展している。


③「暗い雲」 森口宏一

3.「暗い雲」 森口宏一

本作品は1993年、作者が63歳の時に制作された作品である。作者自身がそのように説明していたわけではないが、「タイトル」から想像するならば、バブル経済が崩壊した時代状況を、ウレタン樹脂を使ったこうした構成によって、はからずも表現しているのかもしれない。あるいは雨粒をはらんだ気体としての雲の物質性を、金属という素材とシンプルな形状で構成・表現したものとも捉えられる。

 

森口宏一
1930年大阪に生まれる。関西大学で統計学を学び、行動展に出品、60年代はじめ、抽象作家集団「テムポ」を結成、アルミニウム板、ポリエステル、クロームメッキ、ステンレス、蛍光灯といった工業素材を使ったレリーフやオブジェを制作する。70年代の「表面の構造」シリーズを経て、80年代以後は、鉄を主要素材とした構造的な彫刻、あるいはインスタレーションへと展開する。1995年、国立国際美術館(大阪)において回顧展が開催され、2011年に没した。


④「煙のように」 デイヴィッド・ウィルソン

4.「煙のように」 ウィルソン

英国で絵画を学んだ経験から、彼が手掛ける彫刻にはその影響が色濃く出ており、この作品も、まるで筆で描いたような自由自在な形状が特徴的である。90年代以降、アルミとブロンズを使ったカラフルな色彩の作品を多く手掛けるようになり、そのインスピレーションの源泉は、風景や空を観察することだと作家自身が語っている。メルボルン在住アーティストとして、オーストラリアの彫刻界に重要な歴史を刻んでいる作家である。

 

デイヴィッド・ウィルソン
1947年生まれ。1965年、英国からオーストラリアに移住。1973、76年、シドニー・ビエンナーレ、1981・84・90年、オーストラリア彫刻トリエンナーレに出品等。オーストラリア・ナショナル・ギャラリーやヴィクトリア・ナショナル・ギャラリー、クイーンズランド・アート・ギャラリー、タスマニア美術博物館等に作品収蔵。


⑤「ケツァルコアトル」 セバスチャン

5.「ケツァルコアトル」 セバスチャン

鉄やコンクリートを用いたモニュメンタルな作品で知られ、メキシコやその他の国々に200を超える作品が設置されている。日本にも10を超える作品があり、東京・千鳥ヶ淵公園内の日本人メキシコ移民百周年記念のモニュメントや堺市庁舎前の巨大なモニュメント等が設置されている。本作品のタイトル「ケツァルコアトル」とは羽毛のある蛇という意味で、アステカ神話の文化神、農耕の神を指す。

 

セバスチャン
1947年生まれ。1979~85年、メキシコ造形作家協会会長。1983年にはオランダ王妃によって芸術アカデミー名誉会員に任命された。メキシコ国立自治大学教授を25年以上も務めている。1984、1992年にノルウェー国際グラフィック・ビエンナーレで審査員賞受賞、1987年「第5回ヘンリー・ムーア大賞展」で優秀賞など。大阪府が主催する「大阪トリエンナーレ・彫刻」では1995、1998年に受賞。


⑥「韻律と理由」 ダニエル・バレット

6.「韻律と理由」 ダニエル・バレット

本作品について、審査員の一人は「鉄の板や棒を複雑に組み合わせて、主題のごとくリズミカルな詩的運動を表している」と評している。中心からその外縁に向かって鉄の複雑な面や線が軽やかに拡散しており、鉄という素材の重い硬質性と、リズミカルな動きという相反する2つの要素が同居する様は、見ていて目に楽しい効果をもたらしてくれる。

 

ダニエル・バレット
1927年、アイルランドに生まれる、2003年没。1949年、東アフリカを訪れて民族芸術を学び、ケニアやウガンダ等で彫刻家として活動。その後イスラエルに移り、1961年までに複数のパブリック・アートを制作している。1966年にはニューヨークにスタジオを構え、ニューヨーク近代美術館やグッゲンハイム美術館のグループ展に出品。生涯を通じて、英国、アイルランド、ドイツのオランダの主要美術館やギャラリーで個展を開催した。


⑦「悲嘆する花」 セバスチャン

7.「悲嘆する花」 セバスチャン

作者はこう語る「この作品はここ数年に起こった自然災害や、メキシコでの虐殺、クロアチアでの集団殺戮、東京でのサリン事件、旧ソビエトでの内戦といった血にまみれた出来事に対する私の造形的回答であり、抵抗である。私の作品は常にカラフルだが、今回は黒一色。これは我々が強いられている“蒙昧主義”(意図的に曖昧な言い方をしたり、ある問題を明るみにすることを妨げるような態度)を反映している。」

5つの柱は、それぞれ5角形から派生した“ねじれ角柱”の上に、5枚の花弁が乗っているが、どれも異なる形をしており、形の多様性を示している。

 

セバスチャン
1947年生まれ。1979~85年、メキシコ造形作家協会会長。1983年にはオランダ王妃によって芸術アカデミー名誉会員に任命された。メキシコ国立自治大学教授を25年以上も務めている。1984、1992年にノルウェー国際グラフィック・ビエンナーレで審査員賞受賞、1987年「第5回ヘンリー・ムーア大賞展」で優秀賞など。大阪府が主催する「大阪トリエンナーレ・彫刻」では1995、1998年に受賞。


⑧「夢の貿易会社」 チュン・クックタク

8.「夢の貿易会社」 チュン・クックタク

作者は語る「都市はダイナミックで変化に富む場所でありながら、人々を競争に駆り立てる場でもある。この作品は近代的な都市の中で生きるサラリーマンの日常を、風刺的かつユーモラスに表現したものである。彼らは活動的でありながらも、あまりに多忙であるがゆえに受動的に生きざるを得ない。標準化され、正規化されたサラリーマンの日常を切り取り、現代の文化や人について熟考することで、我々自身の生について振り返り、再び光を当てたいと考えた。」

 

チュン・クックタク
1971年、ソウルに生まれる。2005、2007年、洞爺村国際彫刻ビエンナーレ。2007年、東北アジア美術展。2014年、アジア・ホテル・アートフェア・ソウル、アートショー・プサン。

http://kuktaek.com/


⑨「男 床屋の椅子と髭そり」デビッド・ガブリエリ

9.「男 床屋の椅子と髭そり」デビッド・ガブリエリ

作者は語る「私にとって作品づくりのインスピレーションの源は、たわいのない、でも繊細な日常の風景であり、ごく普通の人々をテーマにしている。この作品では床屋がお客の喉にカミソリを当てる瞬間をとらえている。リラックスして椅子に横たわらなければいけない。が、よく知らない床屋を信頼もしなければならないという状況を劇的に表現している。四角形と三角形を組み合わせた暗い色の鉄の構造物の中心に、光を放つステンレススチールのカミソリを置くことで、床屋とお客が繰り広げるドラマにスポットが当てられている。」

年月とともに錆色を深める鉄と、いまだ光を放つステンレススチールとのコントラストが作品のテーマを強調している。

 

デビッド・ガブリエリ
1968年、イスラエルに生まれる。1996年、多摩美術大学入学。1996年、「第60回新制作展」(東京都美術館)にて新人賞、「第5回アーバナート展」(渋谷パルコ、東京)、「第2回外国人留学生美術展:来てみればJAPAN展」(アサヒビール芸術文化財団、すみだリバーサイドホール、東京)・1997年、INAXギャラリーにて個展。


大地の池北側

⑩「空虚な筒」 エル・アナツイ

10.「空虚な筒」 エル・アナツイ

ワインやウイスキーのふた、アルミ等の金属製廃材をくみ上げる大胆な造形手法で豊かなイメージを生み出す作風で知られる。1975年からナイジェリアで活動。「アートは環境から生まれるものであって、“新しく作る”ものではない」と語る作家は、あえて廃材を利用し力強い表現を生み出すことで、消費社会に対してもメッセージを発し、欧米を中心に高く評価されている。本作品でも無数の穴が開いた鉄板を、人か生物かを思わせる形にリズミカルに組みあげ、荒々しい素材から詩情豊かでユーモラスな表現を生み出している。

 

エル・アナツイ
1944年、ガーナに生まれる。1964年、クマシのクワメ・エンクルマ科学芸術大学入学、彫刻専攻。1975年、ナイジェリア大学で彫刻を教える。1990年、「第44回ヴェネツィア・ビエンナーレ」で選外佳作賞。1995、98年、「大阪トリエンナーレ」にて受賞。2007年、「第52回ヴェネツィア・ビエンナーレ」出品2010年、ライス大学アートギャラリー(テキサス)で個展。2010~2011年、回顧展「エル・アナツイのアフリカ アートと文化をめぐる旅」(国立民族学博物館、神奈川県立近代美術館、鶴岡アートフォーラム、埼玉県立近代美術館を巡回)。2015年、「第56回ヴェネツィア・ビエンナーレ」で栄誉金獅子賞。2017年、「高松宮殿下記念世界文化賞」彫刻部門受賞。


⑪「我々は歩き続ける、そして・・」 シディア・レイエス・エスカローナ

11.「我々は歩き続ける、そして・・」 シディア・レイエス・エスカローナ

シンプルで力強い鉄の彫刻を多く手掛け、母国ベネズエラの広場やアメリカの公園等でも多くのパブリック・アートが設置されている。本作品と同様のねじれたはしご、あるいは線路のようなモチーフがたびたび登場している。作品のタイトルは時に“脱線”“挫折”という意味の言葉が用いられることもあり、人生の紆余曲折を形として表現しているのかもしれない。

 

シディア・レイエス・エスカローナ
1957年、ベネズエラに生まれる。1994年、「コロンボ・ベネズエラ・アート・ビエンナーレ」でグランプリ受賞。1997年、「ナショナル彫刻ビエンナーレ」(ベネズエラ)で優秀賞。1998年、「第7回国際アート・ビエンナーレ」(カイロ、エジプト)にて優秀賞。「木彫刻シンポジウム」(サン・ピエール・ド・シャルトルーズ、フランス)で優秀賞。1999年、メリナ・メルクーリ文化センター(ギリシャ)で個展。2000年、国際展示場(パリ)で個展。2012年、「第7回アート&サイエンスサロン」(カラカス国際大学)出品。2013年、「サウス・パナマ・ビエンナーレ」出品。ベネズエラやアメリカ、フランス等でパブリックアートを多数設置。


⑫「Work」 森口宏一

12.「Work」 森口宏一

80年代初頭に制作された構成的かつ架設的なこの作品は、東側の駐車場に設置されている同名の作品と同年に制作されたものである。垂直、水平のステンレスの板材に、網状の部分にはエキスパンドメタルという素材が用いられている。ブロンズの人物像など従来の彫刻表現とは一線を画し、新しい彫刻の姿を求めようと、工業素材等を用いて様々な実験的試みがされた時期の作品である。

 

森口宏一
1930年大阪に生まれる。関西大学で統計学を学び、行動展に出品、60年代はじめ、抽象作家集団「テムポ」を結成、アルミニウム板、ポリエステル、クロームメッキ、ステンレス、蛍光灯といった工業素材を使ったレリーフやオブジェを制作する。70年代の「表面の構造」シリーズを経て、80年代以後は、鉄を主要素材とした構造的な彫刻、あるいはインスタレーションへと展開する。1995年、国立国際美術館(大阪)において回顧展が開催され、2011年に没した。


日本庭園前駐車場

⑬「Work」 森口宏一

13.「Work」 森口宏一

80年代初頭に制作されたこの作品は、国立民族学博物館前に設置されている作品と同様、ブロンズの人物像など従来の彫刻表現とは一線を画し、新しい彫刻の姿を求めようと、工業的素材を用いて様々な構成的かつ架設的な作品を手掛け、試行錯誤するという時期に制作されたものである。

 

森口宏一
1930年大阪に生まれる。関西大学で統計学を学び、行動展に出品、60年代はじめ、抽象作家集団「テムポ」を結成、アルミニウム板、ポリエステル、クロームメッキ、ステンレス、蛍光灯といった工業素材を使ったレリーフやオブジェを制作する。70年代の「表面の構造」シリーズを経て、80年代以後は、鉄を主要素材とした構造的な彫刻、あるいはインスタレーションへと展開する。1995年、国立国際美術館(大阪)において回顧展が開催され、2011年に没した。


解説/大阪府府民文化部文化・スポーツ室文化課


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